
ボード・内装 DRYWALL INSTALLER
“見えなくても誇れるか”真っすぐな心で挑む妥協なき仕事。
「下地もボードも“水平・垂直”の世界。ピシーッと決まると、気分が良くなるんです」。内装職人として5年間腕を磨いてきた田中さんの口調には、自らの仕事への誇りがにじむ。軽量鉄骨の下地を組み、その上にボード貼りをして天井や壁を仕上げていく工程は、完成後には表から見えない。しかし彼にとっては建物の美しさを支える基盤であり、一切の妥協を許さない。“どうせ隠れるから”ではなく、“見えなくても誇れるか”を自分に問い続ける姿勢がある。

もともと物を作るのが好きで、幼い頃から常に何かしら作っている子どもだった田中さん。「自分では覚えてないのですが、いつだったか誕生日にA4用紙をねだったことがあったそうです」。きっと親も驚き半分、戸惑い半分だったと想像するが、大量の紙で工作に没頭する息子の姿を、面白がって見守ってくれたという。今でも普段から棚や足場を作るなど、家のちょっとした日曜大工をこなす。「血が騒ぐというか、パッパッパっと体が動いちゃいます」と笑うその目は少年のままだ。
だが職人として歩み始めた当初は、材料搬入ばかりで現場に入れてもらえず不満を抱く日々が続いた。なかなか仕事を覚える機会に恵まれず、いざ現場に入ることができても自分のやり方が正しいのかどうか不安でいっぱいだったという。「あの頃が一番つらかったですね。でも気持ちを強く持って、思い切って周りに聞くと、必ず誰かが教えてくれる。そうやってどんどん仕事を覚えていけたんです」。負けず嫌いな性格も相まって、厳しい声が飛んでも「やってやる」と奮い立った。そんな姿勢は次第に先輩や仲間の目にも留まり、徐々に信頼を勝ち取っていった。
任される喜びから広がった、職人としての世界。
転機は3〜4年目。一人で任される範囲が広がり、自分の思い描いた通りに工程を進められるようになると、仕事の面白さが一気に広がった。小さな部屋から始まった下地組みは、やがて大きな空間を任されるまでに。ボードも1日10枚が精一杯だった頃から、今では30枚、40枚を貼れるまでに成長した。「スピードだけじゃなく、次の作業を頭で描きながら動けるようになったのが大きいですね」と、技術の向上だけでなく職人としての視野の広がりを実感している。

現在は国家資格である内装仕上げ施工技能士の取得を目指して勉強中。材料の特性や施工方法を理論的に理解し、現場で応用できる力をさらに磨くことが目的だ。「資格者が多いことは会社にとっての強みにもなりますし、自分が積み重ねてきた努力を証明するものでもあります。挑戦できるものはどんどんチャレンジしたいですね」。仲間に頼られる存在となり、いずれは後進を導くことも見据えている。見えない下地に宿る職人の矜持と情熱。田中さんの “真っすぐ”な眼差しは、やがて人々が安心して過ごす空間となって立ち上がっていく(2025年取材)。

