
異国の空の下、足場を架け、家族を支える。
「高いところは気持ちがいいです。足場が一段ずつ上がっていくのを見ると、やっぱりうれしいですね」。一つひとつ言葉を選びながら、人懐こい笑顔で話してくれるハイさん。ベトナム中部のドンホイ出身で、世界遺産・フォンニャ=ケバン国立公園の近くにある自然豊かな町で育った。2年前、家族のために出稼ぎに来日し、現在は山形の建設現場で足場の組立てに勤しんでいる。
日本語はインターネットでベトナム人の先生から学び、今も勉強を続けているという。


来日当初は、会話や方言(特に山形弁)に戸惑うこともあったが、「今はだんだん分かるようになって、現場の会話も楽しくなってきました」と話す。「とても親切にしてくれます」という先輩たちに支えられながら、鳶として現場での経験を重ねているハイさん。「いろいろな現場に行けるのも楽しいですし、仕事を覚えるのが面白いです」。今後は在留資格“特定技能2号”への移行を目指し、「できればずっと日本で働きたい」と意欲を見せる。
今、建設業界では人手不足が深刻化する中で、ハイさんのような外国人技能者が貴重な担い手として活躍している。異国の地で前向きに学び、働く彼らの存在が、現場の大きな力となっているのだ。
フォーボーの湯気に、ふるさとが浮かぶ。

「休みの日は友達と一緒に買い物に行って、一緒にごはんを作るんです」。日本の料理も大好きだけれど、「ベトナム料理も、おいしいんですよ」とはにかむ。よく作るのは、ベトナムの定番料理「フォーボー」。牛肉のうまみが溶け込んだスープに、米粉で作られた平たい麺のフォーや、にんじん、ネギを入れたあたたかい一皿だ。コトコト煮込む間、スパイスと肉の香りがふわっと広がる。「食べると、ベトナム思い出しますね」。ベトナム人にとって、食事は空腹を満たすだけでなく絆を築く大切な時間。友人と食卓を囲みながら、それぞれの仕事のことなどを互いに分かち合う時間は、ハイさんにとって何物にも代え難い大切なひとときになっているようだ(2025年取材)。
