COLUMN あの先輩は今!?

急速に変化と進化を遂げる業界と並走する日々。

向井建設株式会社 東北支店/武田勇平( 40歳 )/鳶

鳶職人として積み上げたキャリアは今や23年、40歳という節目の年を迎えた武田さん。かつて若手の職人として現場を駆け回っていた彼も、いまや現場をまとめる職長として、さらに青森・秋田・岩手の北3県を束ねる支部長という立場にある。建設業界の大きな変化を経験し、後進の育成に尽力する彼の言葉には、実直な仕事観と誇りが滲む。「一番変わったのは、足場のシステムですね。33歳の頃、それまで使っていたハンマー式の足場材から、ネジを締める枠組み型の“次世代足場”に切り替わった。見た目も構造も一新され、安全性も大幅に向上しました。今では、先に手すりを設置してから上がるのが当たり前。手すりのない状態で高所に上がることは禁止されているので、墜落事故も大きく減りました」。

23年のキャリアの中で、人間としての器も大きく成長。多くの仲間に慕われている。

長年やってきたものが急に新しくなったことに、最初は戸惑いもあったという。「でも、いま現場に入ってくる若い人たちは最初からこの新しい足場材で訓練されている。自分たちも考えと技術をバージョンアップしていかないとね」。武田さんの周囲では、世代交代も進んでいる。上の世代の職人たちが定年で現場を離れ、今では自分が現場のまとめ役。若手に仕事を教えながら、支部長として北3県の職長たちを取りまとめるという重要な役割も担う。「もちろん大変ですけど、だからこそやりがいがあります。会社に対して責任を果たすだけでなく、これからの現場を担う若い世代に、自分が学んできたことを伝えていく必要があると思っています」。
若い世代の育成において、武田さんが心がけているのは「楽しく教える」こと。現場でどうやったら安全で効率よく作業できるかを、一緒に考えながら教えるスタイルだ。「仕事がつまらないと思ったら、すぐに辞めちゃうんですよ。でも“この仕事おもしろいな”“続けていきたいな”って思ってもらえたら、自然と身につくし、続くと思うんです」。現場では女性の姿も増えてきた。以前は少なかった女性職人だが、ここ数年で参加する人が徐々に増え、現場の設備も女性向けに配慮されるようになってきたという。「環境が整えば、女性も働きやすくなる。それは結果として、男性にとってもよりよい職場環境になるんです」。

現場と向き合い、自らをバージョンアップし続ける。

7年ほど前を機に足場のシステムが次世代式に変わり、鳶の仕事も大きく変化。

現在、武田さんが有する資格は20以上。経験を積まないと取れないものも含めて、現場に応じて必要なものを随時取得してきた。安全管理や足場組立の監督業務に関わる資格は、今では持っていないと現場に入れないケースも多い。収入面でも、年功序列というよりは「見てくれる人がいれば、評価してもらえる」世界だという。頑張りが正当に評価され、ボーナスも含めて収入は10年前と比べて大きく伸びた。「危険な仕事だけど、その分やりがいもある。体力だけじゃなくて、今は頭も使う時代になった。若い子たちにも、ただの力仕事じゃないっていうことを伝えていきたいです」。
家庭も仕事も安定し、技術的にも体力的にも“脂ののった時期”にある今、若手の成長を支えつつ、自身も現場で成長を続ける日々が続いている。「建設業界も、まだまだこれから変わっていくと思います。でも、その変化にちゃんと対応できるように、自分も柔軟でいたいですね」。新しい技術やシステムにいち早く対応し、現場の安全と効率を守る。その根底にあるのは、「人を育てる」という強い信念と、現場に対する真摯な姿勢だ(2025年取材)。

向井建設株式会社 東北支店
武田勇平( 40歳 )/鳶