
10年目の節目に見えた景色。
約7年ぶりの再会。現場で初めて会ったあの頃よりも、すっかり雰囲気が引き締まり、精悍な印象を受ける。「ちょっと痩せましたね」と言うと、本人も「やつれたんじゃなくて締まったんだと思います」と笑う。年月の中で、技術だけでなく“現場を背負う覚悟”も身につけてきたことが、言葉の端々から伝わってくる。
この7年の間に、彼女の立場は大きく変化した。「現在は6人ほどのチームで現場に入っており、職長のすぐ下、いわば“サブ”の立場としてチームを支えています。段取りや進行の管理、周囲との連携など、職人という枠を超えた視点が求められるポジションです。以前は自分の周囲のことだけで精一杯でしたが、今は全体を見ながら動けるようになりました」と話すその声には、確かな自信がにじむ。


「特に印象に残っている現場は、北上市で6年かけて進められた大規模な半導体工場の建設。工程は複雑で、日によって作業内容が大きく変わる。朝はある場所で作業し、午後には別の場所で別の工程に入る──そんな日々の連続でした。あれはほんとうに大変でした。でも、あの現場を経験したことで、体力も気力も鍛えられたと思います」
道具へのこだわりも、職人としての成長の証だ。最新の工具や、手に馴染むコテを自ら選び、買い揃える。「最近はバッテリーの小型化がありがたいですね。持ちもいいし、作業がしやすくなりました」。“道具は相棒”という言葉がぴったりだ。また、資格取得にも積極的だ。合格率5割という超難関・型枠一級技能士をはじめ、これまでに複数の資格や免許を取得し、クレーンなど大型機械の操作も可能になった。「自分から取りたいと思うものもあれば、“そろそろ取ったら?”と会社から背中を押してもらうこともあります」。そう語る彼女は、次に狙う資格もすでに見据えているという。
資格を取ることで、手当がつくなど待遇面にも反映される。実際、7年前と比べて給料は倍近くになった。「ちゃんと評価されて、お給料に反映されるのはモチベーションになります。現場で認められると自信にもつながるし、もっと頑張ろうって思えるんですよね」
成長は一歩一歩。しかし、確実に、意識高く。

10年目の節目を迎えた今、次に目指すのは“人を育てる”立場だ。まだ年上の同僚が多く、明確な後輩指導の機会は少ないが、いつでもその準備はできている。「新しい人が入ってきたら、教える立場になると思います。自分がやってきたことを伝えられたらいいなって思います」
女性職人としての立ち位置についても聞いてみた。「女性だから特別苦労したとか、逆に特別扱いされたこともないんです。それが会社の良いところかなと思っています」。現在、女性職人は社内に1人という状況だが、現場で孤独を感じることはなく、自分の仕事に集中できる環境があるという。
「もっと大きな現場を任されるようになりたい」。それが、現在の目標。「大きな現場の方が、夢があります。やることも多いけど、その分、得られるものも大きい。だからこそ、資格も技術もまだまだ磨いていきたいですね」
目の前の現場に真摯に向き合い、経験を積み、後輩の背中を支える日も近い(2025年取材)。
